歴史と芸術の街・フィレンツェ。
「イタリアらしさを全身で感じたい」「文化的な刺激のあるロングステイがしたい」という人にとって、まず候補に入る都市です。
街のサイズ感は“ちょうどよい中規模”。歩いて主要観光地を回れるコンパクトさがありながら、美術館・博物館・建築・食文化など、世界トップレベルの濃度で詰まっています。まさにイタリアの京都!
今回は、ロングステイ視点で「フィレンツェって実際どう?」を深掘りします。
1. フィレンツェの基礎情報
● 国:イタリア共和国(Toscana州)
● 人口:約36万人(都市圏150万人)
● 気候:夏は暑く湿気少なめ、冬はやや寒い(0〜10℃)
● アクセス:ローマから列車で約1時間半、ミラノから2時間弱
● 物価:ローマよりやや安いが、イタリア国内では高め
ロングステイで便利なのは、市内交通は徒歩+バスで十分という点。中心部は車両制限区域(ZTL)が多いため、車不要で生活できるのが魅力です。
2. フィレンツェの魅力・特徴
① 美術の密度が圧倒的(世界最高レベルの“歩ける美術館”)
- ウフィツィ美術館、アカデミア美術館、ピッティ宮殿など“ゴールデントライアングル”
- 教会や広場に当たり前のように傑作がある
- 混雑はあるが、長期滞在なら平日朝に行くなどコントロールが可能
② コンパクトで生活しやすい
- ドゥオーモ周辺に生活機能が集中
- 旧市街の外側にスーパー(COOP、CONAD)が豊富
- 観光客多いが、滞在エリアを少し外せば落ち着いた環境
③ 治安はイタリアの中では比較的安定
- 夜間の一人歩きは旧市街以外なら注意が必要
- 置き引き・スリは主要観光地で多め → 防犯意識を持てば問題なし
④ 語学面:英語は観光地中心に通じやすい
- ホテル・レストランはほぼ英語OK
- ローカル店では簡単な英語+挨拶イタリア語があると好印象
3. フィレンツェの歴史
フィレンツェを語るうえで欠かせないのは、やはりルネサンスの中心地という点。
ただ、そこに至るまでの歴史を少し知っておくと、街歩きが一気に深まります。
● ① 起源はローマ帝国の軍事拠点(紀元前1世紀)
- もともとはローマ兵の駐屯地 “Florentia(花の街)”
- 当時から交易都市として発達
→ 石畳や碁盤目状のストリートは、この時代の名残。
● ② 12〜14世紀:商業と銀行で“大富豪の街”に
中世になると、毛織物産業と銀行業(両替商)が急成長。
その中心にいたのがメディチ家。
- メディチ家は銀行でヨーロッパ中に影響力
- その富で芸術家を支援(パトロン文化)
→ この時代の財力が、後のルネサンスを生んだ大きな要因。
● ③ 15〜16世紀:ルネサンスの黄金期
世界史で必ず出てくる有名人がずらり。
- レオナルド・ダ・ヴィンチ
- ミケランジェロ
- ボッティチェリ
- ブルネレスキ(ドゥオーモを設計)
彼らが活躍した場所がこの街で、いわば
**「歩けるルネサンス博物館」**がフィレンツェの魅力。
● ④ 19世紀:イタリア統一運動と一時的な首都
1865〜1871年には、フィレンツェはイタリア王国の首都でもありました。
(ローマが正式な首都になる前の過渡期)
→ 当時の都市開発で、街並みに少しモダンな雰囲気も加わる。
● ⑤ 20世紀以降:観光と文化の街として世界遺産に
- 旧市街は1982年にユネスコ世界遺産
- 歴史保全と観光が非常にうまく調和
今日では、ヨーロッパの中でも“文化密度”で右に出る都市はほとんどありません。
4. 気候・ベストシーズン
| 季節 | 気温の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 春(3〜5月) | 10〜22℃ | もっとも過ごしやすい。長期滞在に最適。 |
| 夏(6〜8月) | 20〜35℃ | 暑い&観光客ピーク。7〜8月は40℃近くの日も。 |
| 秋(9〜11月) | 12〜25℃ | 気候が良く、混雑が緩和。芸術鑑賞の季節。 |
| 冬(12〜2月) | 0〜10℃ | 寒いが観光客が少なく、価格も安い。 |
ロングステイに最適なのは 春と秋。
夏は避ける日本人も多いです。
5. 観光スポット
● ドゥオーモ周辺(花の大聖堂)
- クーポラに登るなら早朝の予約がベスト
- 夕方の鐘の音が幻想的
● ウフィツィ美術館
- 長期滞在の強み=平日朝にサッと行ける
- ボッティチェリ、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロを“生活の中で鑑賞”
● アカデミア美術館
- ダビデ像の圧倒的存在感
- 滞在中に2〜3回行く価値がある
● アルノ川沿い散歩
- 早朝と夕方で全く別の表情
- 写真好きは絶対ハマるルート
6. 食文化:トスカーナ料理は質実剛健
フィレンツェの食は「素朴で力強い」がキーワード。
代表料理
- ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(Tボーンステーキ)
- リボッリータ(豆と野菜の煮込み)
- ランプレドット(牛のモツ煮込みサンド)
- パッパ・アル・ポモドーロ(トマトとパンのスープ)
観光地の中心から少し外れると、値段は一気に落ち着き、よりローカルな料理に出会えます。

7. 生活のしやすさ(スーパー・移動・治安)
● スーパー
- COOP、CONAD、PAM がメイン
- 品揃えは良く、自炊生活は非常に快適
● 移動
- 中心地は徒歩が最強
- バスは路線が多く、アプリ(Tabnet、ATAF)で乗りこなせる
- ZTLがあるため車は不向き
● 治安
- 昼は非常に穏やか
- 夜のサンタマリアノヴェッラ駅周辺は注意
- スリ対策は必須(特にヴェッキオ橋周辺)
8. 英語・イタリア語について
観光地:英語かなり通じる
ローカル生活:最低限のイタリア語あると強い
挨拶
- Buongiorno(ボンジョルノ)=こんにちは
- Grazie(グラッツィエ)=ありがとう
これだけでも印象が全く違います。
9. 日本人サポート・行政サービス
- 在フィレンツェ日本国総領事館あり
- 語学学校多数(短期で気軽に通える)
- 日本人コミュニティはローマ・ミラノほど大きくないが一定数存在
- 日本食材店は少なめ。アジア食材は店による。
10. まとめ:ロングステイ初心者にも実は相性が良い都市
フィレンツェは、観光地としての華やかさと、生活都市としての落ち着きのバランスが絶妙です。
- 歩いて生活できる
- 英語は比較的通じる
- 芸術・文化が生活圏内
- 治安もイタリアの中では安定
- 物価は控えめ(ローマ・ミラノよりは安い)
